扇情的

【せんじょうてき】形容動詞

同義語

同品詞の類義語

挑発的な文芸的
煽情的な文芸的
官能的な文芸的

類義句

同品詞の慣用的言い換え

情欲を掻き立てる文芸的
色香を放つ文芸的

直喩変換

「Xのような」「Xみたいに」形式の直喩

淫らな炎のように文芸的
官能の海に溺れるように文芸的

副詞的言い換え

情態副詞・形容詞の副詞的変換

誘うように

動詞的言い換え

形容詞・副詞を動詞句に変換

刺激する

体言的言い換え

用言を体言に変換

誘惑の罠文芸的

婉曲・強調変換

ニュアンスの増減(婉曲化・強調化)

妖しく文芸的
煽情的に文芸的

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判定する側だけが持てる語

自分の身振りや装いについて「扇情的にしてきました」と述べる人は、まずいません。そう言えば冗談か皮肉になり、額面どおりには受け取られません。多くの評価語は自称にも他称にも回せますが、この形容は他称の位置に固定されています。誰かが動揺し、その動揺の原因を相手の側へ置き直したとき、はじめて口に出せる語だからです。意味を辞書的に追うよりも、誰が使えて誰が使えないかを見たほうが、この語の性格は早く見えてきます。

語形そのものも、判定の道具として組み立てられています。「扇情」という二字漢語は、情を煽るという出来事を名指すだけの語でした。そこへ接尾辞が付いた瞬間、語は出来事の名から、事物の性質を外から測る目盛りへ変わります。煽いだ結果ではなく、煽ぐ性質を備えているという断定に化けるわけです。表記には揺れがあり、火偏の「煽情的」も広く行われています。ただし「煽」は常用漢字表に採られていないため、新聞や放送では「扇」のほうが選ばれます。音数はせ・ん・じょ・う・て・きの六拍で、話し言葉ではやや持て余す長さです。書き言葉の語であるという事実は、音の側にも現れています。

制度史を並べると、この非対称の由来が見通しやすくなります。格子の内側に遊女を並べ、通りから見せる張見世という仕組みは、近代まで続きました。見せることが公認され、場所と時間と料金で囲われている限り、そこに扇情という判定は要りません。囲いそのものが判定の代わりを果たしている。囲いの内側で交わされていた符牒や隠語にも、この種の判定語は見当たりません。判定という語彙が要求されるのは、囲いの外へ出ていくもの——印刷され、複製され、誰の手にも渡りうるもののほうです。

近代の性の管理は、この分業をいっそう明確にしました。明治期には娼妓の登録と定期的な検診が制度化され、管理の照準は生身の身体そのものに合わせられます。一方、出版統制法規に置かれた「風俗ヲ壊乱スル」という文言は、発売頒布禁止の処分を発動させる要件として、像と文字だけを対象にしました。何がそれに当たるかは条文に書かれていません——判断は取り締まる側に委ねられ、語のほうが処分の後から中身を埋めていきました。映画産業が一九三〇年代に自主規制の規約を実効化させたときも、対象になったのは俳優の身体ではなく、複製され流通するフィルムという形式のほうでした。禁じられていたのは行為ではなく、行為の像が動く距離です。

そう考えると、この形容は対象の属性を記述しているようでいて、実際には流通の管理について語っていることになります。扇ぐ側ではなく、扇がれた側が残した記録だと言い換えてもよいはずです。火を煽るという字面が示しているのは、火そのものではなく、風のほうです。判定を下した者は、自分の内側で起きた動揺を、相手の性質という形へ書き換えたうえで記録に残します。扇情的という判定が下された時点で、記録に残るのは対象の側の性質だけになります。処分の書類は長く保存されるのに、それを書いた者が何を見て何を感じたかは、どこにも残りません。

文: hakadoru.ai 編集部

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