情欲

【じょうよく】名詞

同義語

同品詞の類義語

淫欲文芸的
肉欲文芸的
色欲文芸的

類義句

同品詞の慣用的言い換え

熱い思慕文芸的
官能の炎文芸的

直喩変換

「Xのような」「Xみたいに」形式の直喩

獣のような文芸的
マグマのような文芸的

副詞的言い換え

情態副詞・形容詞の副詞的変換

激しく

動詞的言い換え

形容詞・副詞を動詞句に変換

燃え上がる文芸的
駆り立てられる文芸的

体言的言い換え

用言を体言に変換

本能
欲情文芸的

婉曲・強調変換

ニュアンスの増減(婉曲化・強調化)

淫らな衝動文芸的
滾るような文芸的

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目盛りのない量——無標の二字と、数えようとした学問

調査票に「これまでの相手の人数」を書かせる欄があります。無記名で、封をして返送する形式にしても、この欄の集計には繰り返し同じ癖が現れることが知られています。異性間の関係だけを数える設計で集計したとき、男女それぞれの平均値が一致しないのです。閉じた集団のなかで同じ出来事を両側から数えているのなら、総数は定義上そろわなければなりません。ずれるということは、回答者のどちらかが数え違えているか、そもそも「一件」の定義が共有されていないかのどちらかになります。

この不一致は、回答者の誠実さの問題として説明されることが多いのですが、調査票の側の責任も小さくありません。何をもって一件と数えるのか、どこからを関係に含めるのかを、質問文はたいてい定義しないまま尋ねます。異性間の関係しか数えない設計であれば、枠に収まらない回答は最初から集計に現れません。面接で尋ねるか自記式にするか、匿名性をどこまで保証するかによっても、返ってくる数字は動きます。性科学が最初に直面したのは、目盛りそのものが存在しないという事態でした。

日本語の側にも、同じ空白があります。この二字は、助数詞を取りません。三つある、二回あったと数える言い方は成立せず、強い、薄い、乏しいという濃度の語彙でしか量られないのです。数えたいときには、「情欲に駆られた一度」のように、助数詞を出来事の側へ移すほかありません。量として扱おうとするたび、語は自分の外に単位を借りに行くことになります。

しかも並列型の漢語として見ると、この語はきわめて特殊な作りをしています。「情」も「欲」も、単独で求める心のはたらきを表せる字です。前半が後半を限定していないため、二字を重ねても情報が増えません。近い語と比べると、この無標ぶりがはっきりします。色欲は「色」で対象の領域を、肉欲は「肉」で身体という水準を、淫欲は「淫」で度を越しているという評価を、それぞれ前半に書き込んでいます。愛欲は「愛」を掲げることで関係の質を主張します。この語だけが、前半に何の限定も置かず、求める心があるという事実の水準にとどまります。じょ・う・よ・くと四拍を読み終えても、対象も強度も方向も、まだ何ひとつ決まっていません。

分類の歴史は、この無標の領域をどう分割するかの歴史でした。十九世紀末以降の性科学は多くの類型を作り、名前を与え、症例で裏づけようとしましたが、そのかなりの部分は後の世代に取り下げられています。診断分類の版が改まるたび、何が変異で何が病理かの線は引き直されてきました。一九七〇年代には、それまで診断名として掲げられていた項目が削除される決定もありました。分類が更新されるのは観察が精密になったからだけではなく、目盛りそのものが発明品であり、発明品は作り直せるからです。

書き手がこの二字を選ぶとき、選んでいるのは強さの度合いではなく、限定を置かないという態度です。色欲と書けば対象が、淫欲と書けば話者の評価が、文中に持ち込まれます。情欲と書けば、読者は限定のない状態を渡されたまま、続く一文を待つことになります。目盛りのない量を扱うとき、文章にできる最も正直なことは、目盛りがないと知って書くことです。

文: hakadoru.ai 編集部

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