淫ら

【みだら】形容動詞

同義語

同品詞の類義語

みだらな文芸的

類義句

同品詞の慣用的言い換え

淫靡な文芸的

直喩変換

「Xのような」「Xみたいに」形式の直喩

欲望の渦のような文芸的
官能の海に溺れるように文芸的

副詞的言い換え

情態副詞・形容詞の副詞的変換

淫らに文芸的

動詞的言い換え

形容詞・副詞を動詞句に変換

乱れる文芸的

体言的言い換え

用言を体言に変換

肉欲の虜文芸的

婉曲・強調変換

ニュアンスの増減(婉曲化・強調化)

色めく文芸的

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衣を残す理由——崩れを測る目盛り

春画の多くで、人物は着衣のままです。裾が割れ、帯が緩み、襟が肩から落ちかけてはいますが、衣そのものが画面から消えることは稀で、布の面積が構図の大半を占めます。全裸を描けなかったわけではありません。衣が残されているのは、崩れの度合いを示す目盛りが要るからです。布は光も引き受けます。絹の艶と麻の粗さでは、同じ崩れ方でも画面の温度が変わります。整えられた状態が画面のどこかに残っていなければ、崩れは崩れとして読まれません。

絵の側は、その目盛りを配置で作ってきました。屏風、几帳、簾、襖の隙間——遮るものを画面に入れると、見えている部分と見えていない部分の境が生まれ、鑑賞者の視線は隙間へ集まります。遮蔽物は同時に、画面の外にいる者の立ち位置も決めます。簾の内側から見ているのか、縁側から覗いているのかで、同じ構図が別の場面になります。春画が笑い絵とも呼ばれたことが示すように、そこには誇張や滑稽も同居しており、緊張だけで張り詰めた画面にはなりません。細密画や近代の写真でも事情は似ていて、布の折り目、家具の直線、床の格子といった秩序の記号が、崩れた形の隣に必ず置かれます。

日本の絵で、その目盛りをもっとも安く作れるのは髪でした。結い上げられた髪は手数と時間の記録であり、崩れた髪は、その手数が失われた量をそのまま示します。頬にかかる後れ毛が一本あれば、他の部分は整ったままでも状態は伝わります。髪を結い直す動作を描いた絵も多く、崩れと復旧が一組で扱われてきたことがうかがえます。与謝野晶子が一九〇一年に出した歌集の題が、この崩れを指す和語をそのまま採っているのも、語が近代の詩歌へ持ち込めるだけの含みを保っていたからでしょう。

語のほうも、同じ構造を抱えています。「みだら」は、乱れる、みだりに、と同じ語根に属すると説明されており、もとは秩序が保たれていない状態一般を指しました。今も「みだりに立ち入る」という言い方には、性とは無関係の無秩序が残っています。漢字の「淫」を当てたことで、この三拍の和語は性の領域へ寄せられましたが、指しているものはやはり崩れの側です。和語のほうは動詞にも名詞にも形容動詞にもなり活用の幅を持つのに対し、漢語の淫は熟語のなかでしか動きません。何が乱れているのかを示さずにこの語だけを置いても、像は立ち上がらないわけです。省略が効くのも同じ理由からで、画面の中心を空けて周囲を密に描き、動作の直前と直後だけを二枚に分け、顔を伏せて手だけを大きく取る手法は、いずれも整った線を足場として残したうえで、そこからの距離を鑑賞者に測らせる設計になっています。

文章でこの語を使うときも、手順は変わりません。場面を丸ごと乱れさせると、読者は基準を失い、乱れの量を測れなくなります。整っているものを一つだけ残しておくこと——結び直されたばかりの帯でも、揺れない燭台でもかまいません。基準を置く場所は身体でなくてもよく、部屋の道具でも、外を通る物売りの声の間隔でも働きます。規則正しく続いているものが一つあれば、そこからのずれとして崩れが読まれます。三拍のこの語は短く、置いた瞬間に場面全体を染めてしまうので、染まらない一点を先に決めておくほうが安全です。

文: hakadoru.ai 編集部

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