淫蕩

【いんとう】形容動詞

同義語

同品詞の類義語

色香漂う文芸的
艶めかしい
情欲に満ちた文芸的

類義句

同品詞の慣用的言い換え

蕩けるような
淫らな

直喩変換

「Xのような」「Xみたいに」形式の直喩

蜜のように甘美な文芸的
官能の海に溺れるような文芸的

副詞的言い換え

情態副詞・形容詞の副詞的変換

欲情に駆られて文芸的
官能的に

動詞的言い換え

形容詞・副詞を動詞句に変換

色めく

体言的言い換え

用言を体言に変換

淫らな欲望

婉曲・強調変換

ニュアンスの増減(婉曲化・強調化)

淫美な文芸的
恍惚の文芸的

関連語を探す

続かない身体——曲線と曲線のあいだ

長く降りやまない雨を、漢籍では淫雨と呼びます。作物を腐らせる、度を越した長雨のことで、ここに性の含みはありません。度を過ごした祭祀が淫祀と呼ばれたのも同じ理屈です。古い礼書には、特定の地方の音楽を度を越したものとして評する言い方も見えます。この字が担っているのは、限度を越えて続くという性質のほうであって、対象が何であるかまでは字の側で決めていません。数ある用法のうち一つが、いつのまにか字の代表面になった——そう考えるのが自然でしょう。

組み合わされた「蕩」も、もとは水に関わる字です。揺れ動く、洗い流す、締まりなく広がるといった意味の系列に属し、放蕩・蕩尽・動蕩に同じ字が使われます。二字を合わせると、限度を越えて続くことと、締まりなく揺れることが重なります。この熟語が名指しているのは一回の出来事ではなく、続いている状態のほうです。ところが、続くという条件に関して言えば、身体の側の事情はまったく逆になっています。

性的な興奮に伴う変化——心拍数の上昇、呼吸の速まり、皮膚の血流の増加、発汗、筋の緊張——は、いずれも自律神経系の働きによるもので、上限があり、時間とともに戻ります。体温が上がりすぎれば視床下部が放熱を指令し、汗腺が働きます。立毛筋が収縮して鳥肌が立つのも交感神経の作用ですが、これも数十秒で解けます。しかも各系は同じ速さで下りてきません。皮膚の火照りが引くまでの時間は、心拍が平静に戻るまでの時間よりも長くかかります。生理学が記録できるのは、立ち上がり、山をつくり、下りていく一回ぶんの曲線だけです。平らな高原のような状態を、身体は長くは保てません。

こうした反論が可能になったのは、測定の技術が揃ってからでした。心電図や呼吸曲線、皮膚の電気抵抗の変化を同時に記録する装置が二十世紀に普及し、それまで印象で語られていた状態が、時間軸の上の一本の線として並べられるようになります。線にしてみると、持続していると感じられていた区間の内側が、細かい上下の連なりでできていることが見えます。心拍は一定ではなく、呼吸に合わせて速くなったり遅くなったりします。当人には均一に感じられていた区間が、装置の側では絶えず揺れているわけです。締まりなく揺れる、という字義のほうが、身体の実相にはむしろ近いことになります。

同じ刺激を繰り返せば、反応そのものが小さくなることも知られています。慣れと呼ばれるこの性質は神経系のほぼあらゆる階層で観察され、性的な反応も例外ではありません。多くの動物で、興奮の直後にはしばらく反応の起きにくい期間が置かれることも報告されています。その一方で、条件づけによって新しい手がかりが効くようになる過程も知られており、反復は同じことの繰り返しではなく、効く手がかりを入れ替えていく作業でもあります。いずれにせよ、限度を越えて続く状態は身体の内部には存在しないと言ってよいでしょう。存在するのは、下りきったところからもう一度立ち上げるという選択の反復です。

この語が生活の様式を評する言葉として使われてきたのは、そのためだと考えられます。淫蕩と評されるのは身体ではなく、反復を選び続ける人物のほうです。生理学の曲線はおおむね誰のものも似た形をしていて、そこから人柄は読めません。読めるのは、曲線と曲線のあいだに何を置いたかです。時間の使い方、断ったもの、優先した順序が、そこに現れます。淫雨が降り続いた日数で語られたように、この語も本来は時間の量を問題にしていました。物語で使うなら、一夜の描写を厚くするより、間隔と回数を書くほうが、語の中心に届きます。

文: hakadoru.ai 編集部

エディタで直接置換して執筆を加速

SaaS エディタではシソーラスの結果をワンクリックで本文に反映できます

無料で始める →