千鳥の曲

【ちどりのきょく】名詞句

同義語

同品詞の類義語

交差体位文芸的
絡み合う曲線文芸的
鳥の舞文芸的

類義句

同品詞の慣用的言い換え

千鳥の舞い文芸的
交差する快感

直喩変換

「Xのような」「Xみたいに」形式の直喩

鳥の羽ばたきのように文芸的
絡み合う糸のように文芸的

副詞的言い換え

情態副詞・形容詞の副詞的変換

官能的に

動詞的言い換え

形容詞・副詞を動詞句に変換

絡み合う

体言的言い換え

用言を体言に変換

舞う鳥文芸的
交わる身体

婉曲・強調変換

ニュアンスの増減(婉曲化・強調化)

官能の舞文芸的
絡み合う悦び

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三拍に三拍を足す——題名という器を借りる技術

箏と胡弓のための曲に、この名を持つ一曲があります。幕末に名古屋で活動した吉沢検校の作と伝えられ、古い和歌を歌詞に据える組み立てになっています。器楽の部分では、寄せては引く波の動きと、鳥の声が交互に現れます。歌の言葉と器楽の描写が交代で進むこの形式は、聴き手に情景を組み立てさせる仕掛けとして働きます。名の付いた作品というものが、そもそも何かを直接に指さずに何かを立ち上げる装置であることを、この曲は素直に示しています。

語形のほうを見ておきます。「千鳥」は、ち、ど、り——三拍です。ここに「の曲」が加わると、ち、ど、り、の、きょ、く、と数えて六拍になります。「きょ」は拗音ですから、二字で一拍です。三拍がちょうど倍になります。増えたぶんはわずか三拍で、意味の中身は一字も変わっていません。それでも、水辺の鳥の名は、この三拍を得た瞬間に作品の題へと身分を変えます。名づけとは、しばしばこの程度の操作で足りてしまうものです。三拍の語に「の」を挟んで別の名詞を継ぐ形は、そもそも邦楽の題名づくりの基本形でもあります。春の海、六段の調、八千代獅子といった題を並べてみればわかります。この型に載せてしまえば、どんな語でも作品名として読まれるようになります。器のほうが先にあり、中身はあとから入れ替えられるということです。

江戸中期の出版統制で好色本が名指しで禁じられて以降、この分野の書き手は、名指さずに伝える技法を磨くことになりました。見立てはその中心にある手つきです。本来の対象を、隣にある別の秩序へ置き換えて示す。四十八手の名に「の曲」や「崩し」が付くとき、そこで借りられているのは音曲や技芸の題名という、すでに正当性を得ている器です。器が正当であれば、中身までは検分されにくくなります。取り締まりは題目録の水準で行われるほかなく、書物は題の階層で身をかわしました。

近代の翻訳官能でも、同じ構図が繰り返されました。訳者は原文の直接的な語を、雅語や漢語や古典の引用に置き換えて通しています。読者はその置き換えを承知していて、字面の下を読みます。迂回という技法は、書き手と読み手が暗黙の対応表を共有していてはじめて成立します。だから迂回の結果、言葉は減らず、むしろ増えます。禁じられた側の語彙が、迂回路のぶんだけ豊かになるという逆説が、ここには働いています。代償として、対応表が世代をまたいで受け継がれなかった場合、迂回した文章は読めなくなります。近世の艶本が今日の読者に難しいのは、語彙が古いからだけではありません。何を何に置き換えているかという取り決めのほうが、先に失われてしまったからです。

「千鳥の曲」という六拍は、二重の借用でできています。まず水辺の鳥の名を借り、その上に音曲の題という形式を重ねて借りています。二段の包装を解くには、受け手の側にも作法が要ります。作法を持たない者の前では、この六拍はただの箏曲の題として通り過ぎていきます。名を隠すためではなく、名を共有できる者だけに届けるための装置——迂回の技法が同時に読者の選別としても働いてきたことが、この短い題からも読み取れます。

文: hakadoru.ai 編集部

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