覆い被さる

【おおいかぶさる】動詞

同義語

同品詞の類義語

押し倒すcolloquial
押し寄せる文芸的
重なる

類義句

同品詞の慣用的言い換え

身を重ねる文芸的
貪るように抱くcolloquial

直喩変換

「Xのような」「Xみたいに」形式の直喩

嵐のような文芸的
欲望に駆られて

副詞的言い換え

情態副詞・形容詞の副詞的変換

激しく

動詞的言い換え

形容詞・副詞を動詞句に変換

求める

体言的言い換え

用言を体言に変換

絡み合い

婉曲・強調変換

ニュアンスの増減(婉曲化・強調化)

激しく交わるcolloquial
貪欲に求める文芸的

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衣が隠すほうを見る——覆いという構図の装置

パルテノン神殿の破風を飾っていた女神像群は、衣をまとったまま彫られています。薄い布が体に貼りつき、腰から膝へ流れる襞が、その下の量塊をかえって明瞭に伝えます。古代ギリシアの彫刻家たちが到達したこの手法は、裸体そのものを彫るよりも布を彫るほうが肉体を語る、という発見に支えられていました。覆うことが提示になります。美術はこの逆説を、二千年以上にわたって手放していません。

「覆い被さる」という動詞は、その逆説を語形のうちに畳み込んでいます。前項の「覆う」も後項の「被さる」も、どちらも上から掛かることを意味します。同義に近い動詞を二つ重ねた、ほとんど同語反復のような複合です。それでも冗長には響きません。「覆う」だけなら布や蓋の話で済むところへ、「被さる」が体重と質量を持ち込むからです。おおいかぶさる、と一拍ずつ数えれば、お・お・い・か・ぶ・さ・る の七拍になります。日常の動詞としては長い部類で、その長さがそのまま動作の緩慢さに重なって聞こえます。

江戸の艶本を開くと、画面の大半を占めているのは人体ではなく着物です。鳥居清長の『袖の巻』は天明五年ごろの刊とされますが、この種の絵で登場人物が全裸に描かれることは例外的で、多くは襟をはだけ、裾を割った着衣のまま画面に収まります。布の面積が広いほど、露出した肌は狭く、そして強く見えます。絵師が設計しているのは肌の量ではなく、視線が最後に到達する一点までの経路です。覆いは、その経路を作るための装置でした。

写真でも同じ設計が繰り返されています。光源を高い位置に置けば、上にあるものの影が下の被写体へ落ち、輪郭が二重になります。影は物質を持たないのに、面積と方向を持ち、画面のなかで重さのように働きます。インドやペルシアの細密画に描き込まれた天蓋や帳も、絵具の層としてこれと同じ役割を担っています。覆いは常に、二つのものを一つの塊として見せるために使われてきました。

後項の「被さる」にも注意が要ります。「被る」「被せる」「被さる」の三つは同じ語幹から分かれたもので、被るは自分の上に、被せるは他者の上に、被さるは向こうから掛かってくる、という向きの違いを持ちます。三語のうち「被さる」だけが、掛ける者を文のなかに要求しません。帽子は誰かが被せますが、影や枝や雲は誰の手も借りずに被さります。この担い手のいなさが前項の「覆う」と結びついて、行為とも自然現象ともつかない中間の運動が立ち上がります。

文法の側を見ると、この動詞は自動詞で、覆われるものは「に」で示されます。雲が山に、影が机に、枝が屋根に、と主語のほうが動作主の位置を占めます。主語は上にあり、「に」格の名詞は下にあります。上下の配置が格助詞ひとつで確定してしまう動詞は、それほど多くありません。「重なる」なら対等でもよく、「乗る」なら支えの関係になります。ここに小さなねじれが生まれます。語のほうは覆う側を主語に立てて視点を上へ置くのに、絵のほうは覆われた側にこそ焦点を集めるからです。観者の目は布の稜線をたどって下へ降りていくのに、動詞の主語は最後まで上にとどまったままです。描写にこの語を選ぶとき、書き手は視点の位置を一度上に固定することになります。そこから降りるか、降りずに留まるか——絢爛と単調を分けるのは、たいていその一手です。

文: hakadoru.ai 編集部

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