素肌

【すはだ】名詞

同義語

同品詞の類義語

生身文芸的
裸身文芸的
肌理文芸的

類義句

同品詞の慣用的言い換え

肌を重ねる文芸的
肌の触れ合い

直喩変換

「Xのような」「Xみたいに」形式の直喩

絹のような文芸的
柔肌文芸的
透き通るような文芸的

副詞的言い換え

情態副詞・形容詞の副詞的変換

肌と肌で文芸的
直に

動詞的言い換え

形容詞・副詞を動詞句に変換

露わにする文芸的
肌を触れ合わせる

体言的言い換え

用言を体言に変換

肌の感触
裸の身体文芸的

婉曲・強調変換

ニュアンスの増減(婉曲化・強調化)

肌をさらす文芸的
肌を寄せ合う文芸的
肌を重ね合う文芸的

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摺り残された白——「素」があらかじめ呼び込む覆い

浮世絵の版木では、肌に当たる部分に色を置かないことがあります。摺らずに紙の地を残す——白い肌は絵具でつくられるのではなく、何もしないことによって現れます。輪郭の線と、髪や着物の濃い色に囲まれてはじめて、その空白が肌として読めるようになります。省略が形を持つのは、周囲が十分に描き込まれているときだけです。何も置かないという判断は、画面のどこかで濃い仕事が済んでいないと成立しません。

「素」という字は、もともと染めていない白い絹を指したと説明されます。そこから、手を加える前の状態を示す接頭辞として広く働くようになりました。素足、素手、素顔、素焼き、素うどん——並べてみると、共通の構文がはっきりします。いずれも、通常はそこにあるはずの覆いや添え物が無い状態を指しています。素足は靴下を、素手は道具や手袋を、素顔は化粧を、素焼きは釉薬を、それぞれ前提として引き連れています。無いことを言うために、有るはずのものをまず立てる。この接頭辞は、そういう順序で意味をつくります。

「素肌」も同じ作りです。この語は肌の性質を述べているのではなく、その上に本来あるはずのものが取り除かれた状態を述べています。だから素肌と書いた瞬間、文中に一度も出てこない衣服や化粧が、背後に立ち上がってきます。単に「肌」と書いた場合には、この背後の層が現れません。二字のうち一字は、画面の外にあるものを呼び込むためだけに働いているわけです。同じ皮膚を指しながら、召喚するものの数が違います。対になる「肌」の側も見ておきます。地肌、肌理、肌合いというように、この字は表面の状態や質感を語る語をつくってきました。素肌はそこへ、覆いの不在という時間的な条件を接ぎ木します。質感を述べる語に、直前まで何があったかという履歴が付け足されているわけです。

西洋の美術批評には、衣服を奪われた状態と、芸術の形式として構成された身体とを区別する議論があります。前者は無防備な事実であり、後者は様式として組み立てられたものだという整理で、二十世紀半ば以降ひろく参照されるようになりました。この区別を日本語の語彙に置き直すと、「素肌」が前者の側に立つ語であることがわかります。「裸体」は様式の名で、画題として自立します。「素肌」のほうは欠如の名で、何が欠けているかを言わなければ内容が定まりません。

同じ操作は、石の上でも行われてきました。古代ギリシアの彫像には、薄い布が濡れて貼りついたように彫られたものがあり、衣の襞そのものが身体の起伏を伝えます。布を彫ることが、そのまま布の下を彫ることになっている——覆いを削り取るのではなく、覆いのほうへ仕事を集める手つきです。鑑賞者の目はまず襞の流れを辿り、襞が密になるあたりで下の形を読み取ります。順路が設計されているぶん、この彫像はどこから見るかを見る側に委ねません。摺り残された白も、濡れた布の襞も、覆いを消去してはいないという点で共通しています。素肌という語が呼び込む「取り除かれた何か」も、消えてはいないのです。語のなかで位置を変え、背後へ回ったまま居座り続けています。

文: hakadoru.ai 編集部

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