臀部

【でんぶ】名詞

同義語

同品詞の類義語

桃尻文芸的
尻肉
後背文芸的

類義句

同品詞の慣用的言い換え

肉の重なり
桃源郷文芸的

直喩変換

「Xのような」「Xみたいに」形式の直喩

桃のような文芸的
弾力のある

副詞的言い換え

情態副詞・形容詞の副詞的変換

肉感的に

動詞的言い換え

形容詞・副詞を動詞句に変換

揺らす

体言的言い換え

用言を体言に変換

桃源文芸的

婉曲・強調変換

ニュアンスの増減(婉曲化・強調化)

官能の丘文芸的
欲情の震源文芸的

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質問紙が選んだ語——中立を装うという選択

性に関する大規模な調査は、設問文に使う身体語を決めるところから始まります。同じ部位を指していても、和語で尋ねるか漢語で尋ねるかによって、回答者の身構えは変わります。語の生々しさが回答率そのものを動かしうることは、調査法の手引きが繰り返し注意してきた点です。そこで採用されるのは、たいてい臨床と解剖の語彙層に属する語のほうでした。日常の会話でこの二字の熟語を口にする人はほとんどいません——それでも意味は誰にでも通じます。通じるのに使われないという宙づりの状態が、この語を質問紙の語彙にしています。

字の成り立ちを見ると、迂回の仕組みが見えてきます。臀は肉月に殿を添えた形で、殿には後方という含みがあります。軍列の最後尾を守る役をしんがりと呼び、殿の字を当てるのも、その含みの延長にあたります。後ろにあるものを、後ろを意味する字で名指す。命名としては率直ですが、和語の尻に比べれば一段だけ距離が置かれています。日本語の身体語彙は和語と漢語の二層に分かれ、後者の多くは医学と法制の文書を通って定着しました。臀は常用漢字表に含まれておらず、医学やリハビリテーションの文献では殿部と書く例が少なくありません。表外字を避けた書き換えが現場に残ったものと考えられています。肉づきを示す偏を落とした表記が生き延びているのは、この語が制度の側の語彙であることの傍証でもあります。

性を科学の対象にしようとした時期、この部位は分類の道具として使われました。十九世紀の人体計測は、脂肪のつき方の差を集団の指標に読み替え、見世物と学術の両方でそれを流通させています。ロンドンとパリで展示され、一八一五年に没した南アフリカ出身の女性の遺体は、その後長くパリの博物館に保管され、二〇〇二年になってようやく故郷へ返されました。測ることは中立ではありません。何を測るかを決めた時点で、測る側の関心が対象の輪郭を切り出しています。分類の限界とは精度の不足ではなく、分類の軸そのものが誰かの関心の形をしていることでした。

二十世紀の半ば以降、性科学の重心は測ることから聞き取ることへ移りました。ただし聞き取りには別の難しさが残ります。回答者は語彙を選べず、調査票が用意した語で自分の経験を言い直さなければなりません。和語の尻には成句が豊富に付いています。尻が重い、尻に敷く、尻馬に乗る、尻切れとんぼ——身体の後ろ側を指す一字が、態度や順序や結末の比喩をこれだけ引き受けているのに対して、漢語のほうには成句がほとんど育ちませんでした。比喩へ転じないという性質は、指示だけを果たす語としての条件でもあります。設問文が求めていたのは、まさにその条件でした。この漢語で尋ねられて答えた経験と、和語で尋ねられて答えた経験を、同じ欄に集計してよいのかという問いは残ったままです。性の調査が扱いにくいのは、対象が隠されているからというより、対象を指す語が層に分かれていて、どの層を選んでも中立には着地しないからでしょう。

座った姿勢から立ち上がる動作を支える大きな筋がここにあり、骨盤の後ろに厚みを持たせる構造は、人の直立と歩き方から切り離せません。それだけの機能を負いながら、この語が置かれるのは機能の話題からわずかにずれた場所です。診察室の語彙として、調査票の語彙として、この二字は選ばれてきました。中立を装う語彙が隠しきれないのは、中立を選んだという事実そのものです。

文: hakadoru.ai 編集部

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