溢れる

【あふれる】動詞

同義語

同品詞の類義語

吹き出す
奔流する文芸的

類義句

同品詞の慣用的言い換え

ほとばしる文芸的
流れ出る

直喩変換

「Xのような」「Xみたいに」形式の直喩

泉のように文芸的
洪水のごとく文芸的

副詞的言い換え

情態副詞・形容詞の副詞的変換

激しく

動詞的言い換え

形容詞・副詞を動詞句に変換

迸る文芸的

体言的言い換え

用言を体言に変換

溢れ出る歓喜文芸的

婉曲・強調変換

ニュアンスの増減(婉曲化・強調化)

ほとほとと文芸的
奔放に文芸的

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縁を設計する——囲われた過剰の歴史

仕事にありつけない状態を、今も「あぶれる」と言います。割り当ての外へ置かれた者を指す語で、豊かさとは正反対の場面で使われます。この語は、満ちて外へ出るほうの語から分かれた形とされています。多すぎて外へ出ることと、余って取り分をもらえないことが、同じ根から出ている——境界の側に立って眺めれば、二つは一つの事態の表と裏です。過剰と欠乏は、線をどちら側から見るかの違いにすぎません。

古い形は下二段の「あふる」で、現代語では自動詞として使われます。誰かが器を傾けなくても起きる出来事であり、責任の帰属先を持ちません。だからこの語は、内側の量を語っているようでいて、実際には縁の高さを語っています。中身が同じでも、縁が下がればあふれ、上がればあふれません。溢れんばかり、という言い回しが成立するのも、まだ越えていない状態を縁との距離で測れるからです。分かれたもう一方の語のほうは、人にしか使えません。水があぶれるとは言わず、職や仲間といった割り当てのある場面に限られます。同じ根から出た二語が、一方は液体を、一方は人を引き受けるように分かれたわけです。

性をめぐる制度の歴史は、この縁の引き直しの歴史でもありました。中世ヨーロッパの都市の多くは、売春を禁圧するのではなく、市の管理下に置いた家へ集約する方法を選んでいます。都市によっては、営業できる時間や住んでよい通りを指定し、身につける衣服に印を付けさせる規定まで置かれました。内と外の差が、通りを歩く姿から見て取れるように保たれたわけです。日本でも近世に、営業を許した場所の外での商いを禁じる方式が採られています。囲いの内側では衣装や髪型、外出の作法まで細かく定められ、境目は目で見て分かるように維持されました。禁じるのではなく、あふれない形をあらかじめ設計したわけです。

囲いを空間に置くやり方の隣には、時間に置くやり方もありました。古代ローマのサトゥルナリアでは、期間を限って主従の振る舞いが逆転したと伝えられ、中世以降の謝肉祭は、断食に入る前の数日に飲食と乱痴気を集中させます。年に一度だけ縁を下げておき、その日が終われば元の高さへ戻す方式です。空間で囲うか、時間で開くか——どちらも、越える量を制度の側で見積もっている点では変わりません。そして囲いは、囲われなかった側を同時に作り出します。公許の区画の外には私娼の集まる場所が繰り返し生まれ、取り締まりと再発が長く続きました。越える者がいるから、縁は縁として意識されます。近代に入ると、管理の方式は建物の壁から、登録・検診・住所の届出といった書類の側へ移りました。壁で囲えなくなった分を、名簿が囲うようになったのです。

この動詞を物語で使うとき、書かれていなければならないのは、あふれた中身ではなく、あふれられた側の縁のほうです。感情が溢れる、と書くだけでは、どこからどこへ出たのかが決まらず、読者は量を測れません。器の高さ、部屋の広さ、その場にいる人数、守られていた手順を先に立てておけば、同じ一滴が越境として読まれます。越えた先に何があるかも縁の側が決めており、塀の外に町があるのか、堀の水があるのか、名簿の空欄があるのかで、あふれた者の行き先は変わります。制度史が示しているのは、豊かさと逸脱が同じ現象の二つの呼び名だという、この語自身が最初から抱えていた事情です。

文: hakadoru.ai 編集部

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