揉みしだく

【もみしだく】動詞

同義語

同品詞の類義語

弄ぶ文芸的
愛撫する
揉むcolloquial

類義句

同品詞の慣用的言い換え

手荒く扱うcolloquial
指先で弄る文芸的

直喩変換

「Xのような」「Xみたいに」形式の直喩

甘美な夢のように文芸的
官能の波に溺れるように文芸的

副詞的言い換え

情態副詞・形容詞の副詞的変換

淫らにcolloquial
ゆっくりと

動詞的言い換え

形容詞・副詞を動詞句に変換

触れる
指を這わせる文芸的

体言的言い換え

用言を体言に変換

快楽の舞文芸的
官能の調べ文芸的

婉曲・強調変換

ニュアンスの増減(婉曲化・強調化)

激しくcolloquial
夢中で
乱れるように文芸的

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単独では立てない動詞——「しだく」が背負う不可逆

夏の下草を踏みしだいて歩いたあとの道は、しばらく元に戻りません。倒れた茎は起き上がってきますが、潰れた繊維は潰れたままです。この「しだく」という成分は、現代語では単独でほとんど使われず、複合動詞の後項としてだけ生き延びました。踏みしだく、噛みしだく、そして揉みしだく。前の成分が動作の様式を担い、しだくが結果の性質を担うという分業になっています。単独では立てない語が、他の動詞に寄生する形で意味の一区画を守り続けている——日本語の動詞には、こうした化石がいくつも埋まっています。

しだくが担っているのは「乱暴に扱って形を損なう」という含みです。したがってこの見出し語は、揉むという動作に不可逆性を上乗せした語ということになります。拍で確かめると、もむ は も・む の二拍、もみしだく は も・み・し・だ・く の五拍で、差は三拍です。この三拍が引き受けているのは動作の持続だけではありません。終わったあとに何が残るかまでを、語形が先に宣言しています。揉むと書けば場面は開いたままですが、揉みしだくと書いた瞬間に、結果の方向が決まってしまいます。

触れることをめぐる哲学は、手の奇妙な二重性から出発してきました。右手で左手に触れると、触れている手はその瞬間に触れられている手でもあります。メルロ=ポンティが繰り返し書き留めたこの反転は、自分の身体においては何度でも起こります。しかし相手の身体を相手にしたとき、反転は完結しません。掌のなかにある形と温度と抵抗はたしかに手に届いているのに、その内側で何が起きているかは、こちらの感覚には決して開かれないのです。触れれば触れるほど、届いていない部分の輪郭のほうがはっきりしてきます。

接触が接触でありうるのは、いつでも手を離せるという保証があるからでもあります。握力を緩めれば相手は元の形に戻り、掌の跡は数十秒で消えます。可逆であることが、所有ではない接触の条件になっている。しだくという成分は、その保証をあらかじめ外す働きをします。だからこの語は、実際の動作の強さを言うより先に、関係の性質のほうを言ってしまうのです。書き手がこの五拍を選ぶときには、場面の温度ではなく、その後に何が残るかを選んでいることになります。

破壊の含みは、届かなさへの苛立ちの記録としても読めます。潰せば内側が出てくるわけではありません。形を損なっても、そこから現れるのは損なわれた形であって、隠されていた何かではないのです。それでも手はしばしばそのように振る舞います。欲望が対象を毀損しかねないという古い構造が、この語がわざわざ結果まで名指してしまう点に、そのまま保存されています。

一方で、触覚は原理として相互的です。揉みしだく手は文法上は一方向の主語に立ちますが、その手も同時に、押し返される感触を受け取り続けています。相手の身体が硬さを変えれば、こちらの手のほうが先に形を変えます。この語が五拍もの長さを必要とするのは、動作が長引くからではなく、動作と結果と、そこに巻き込まれる側の手までを一語で抱え込もうとしているからでしょう。有限な手が有限なまま他者に触れる、その事情を、日本語は複合動詞の形で保存してきました。

文: hakadoru.ai 編集部

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