二つ巴

【ふたつどもえ】名詞句

同義語

同品詞の類義語

絡み合う文芸的

類義句

同品詞の慣用的言い換え

乱れ結び文芸的

直喩変換

「Xのような」「Xみたいに」形式の直喩

糸が縒り合うように文芸的

副詞的言い換え

情態副詞・形容詞の副詞的変換

ねじれながら

動詞的言い換え

形容詞・副詞を動詞句に変換

絡み取る

体言的言い換え

用言を体言に変換

結び目

婉曲・強調変換

ニュアンスの増減(婉曲化・強調化)

淫らな旋回文芸的

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上下を決めない図案

軒先に並ぶ丸瓦の先端には、渦を巻く紋様がしばしば刻まれています。勾玉のような形を回転させて配した巴文で、三つを組んだ三つ巴が最もよく知られ、二つを組んだ形も一つだけの形も用いられてきました。太鼓の胴にも描かれ、社寺の紋としても広く流通しています。渦の向きによって左巴と右巴が区別され、家や社ごとにどちらを用いるかが定まっていました。日常語に残った三つ巴の争いという言い方は、三者が互いに噛み合って優劣の決まらない状態を指しますが、この含みは図案の性質から直接来ています。渦を巻く形が水の流れに通じるとして、瓦の紋様には火除けの願いが込められていたとも言われます。

二つ巴の図形は、中心のまわりに百八十度回した形が元と重なります。上下を入れ替えても図案が変わらないという条件は、見る側にとって基準点の消失を意味します——どこが天でどこが地かを、図のほうが指定しないのです。三角形なら底辺が下だと分かり、人の姿なら頭が上だと分かるところを、この紋様はどちらの向きで掛けても正しい姿を保ちます。二つの要素は互いに相手の尾を追い、追い越しも決着も起こりません。図案としてのこの均衡が、名を借りた側の配置にもそのまま引き継がれています。呼び名が告げているのは、主従の決まらない噛み合いという幾何のほうです。

春画の画面設計も、単一の視点を立てないという点では同じ流儀に属します。人体はしばしば解剖学的にありえない角度でねじられ、顔と身体の要となる部分が一つの画面に同時に収まるよう組み立てられました。写生の失敗ではなく、見せるべきものを取捨した結果の配置です。背景は屏風や襖の縁で切り取られ、遠近の奥行きはほとんど描かれません。省略された空間のぶんだけ、布の襞と手足の交差が画面を占め、視線はその線に沿って運ばれていきます。

上下を持たないという性質は、巴だけのものではありません。日本の家紋の多くは円の内側に納められ、中心のまわりに要素を等間隔で配する骨格を持っています。菊、木瓜、蛇の目——いずれも軸ではなく中心で組まれた図案で、どちらを上にしても図は壊れません。桐や矢のように上下の定まった紋もありますから、全部がそうだというわけではありませんが、円と中心で組む流儀が層として厚いことは確かです。西洋の紋章が、盾という上下の決まった面を前提に、上部と下部へ意味を配分してきたのとは組み立てが違います。幕でも幟でも軒瓦でも、風で裏返ろうが向きが変わろうが、円の紋は同じ資格のまま読まれました。掛け違えという事故が起こらないという実用が、上下を持たない設計を後ろから支えていたのでしょう。

紋様の語で配置を呼ぶという発想には、実務上の利点もありました。図案の名は形そのものを一語で指し、しかも既に誰もが目にしている形です。軒瓦にも太鼓にも社殿の幕にもある紋を持ち出せば、説明なしに配置の骨格が伝わります。加えて、この名は誰が上でも下でもないと宣言してしまう。回転して重なる図形を選んだ時点で、優劣も順序も名前の外に置かれました。意匠から借りた語が身体の配置へ渡ったとき、一緒に運ばれたのは形の輪郭だけではなく、その形が拒んでいた序列のほうだったことになります。

文: hakadoru.ai 編集部

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