太腿

【ふともも】名詞

同義語

同品詞の類義語

大腿文芸的
脚の付け根
腿肉colloquial

類義句

同品詞の慣用的言い換え

ふくらみ
下半身の曲線文芸的

直喩変換

「Xのような」「Xみたいに」形式の直喩

桃のような文芸的
弾力のある

副詞的言い換え

情態副詞・形容詞の副詞的変換

肉感的に

動詞的言い換え

形容詞・副詞を動詞句に変換

揺らす

体言的言い換え

用言を体言に変換

脚線美文芸的

婉曲・強調変換

ニュアンスの増減(婉曲化・強調化)

誘惑的な
官能の曲線文芸的

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関節から関節まで、あるいは輪郭を決めないという処理

洋服の型紙を引くとき、脚の部分には「わたり」という寸法が使われます。股下から少し下がった位置での幅を指す語で、ここが合っていないと、縫い上がった衣服は歩く動作を妨げます。人体計測の項目には大腿囲があり、どの高さで巻尺を回すかがあらかじめ決められています。どちらの仕事も、まず線を引く位置を決めるところから始まります。測るという行為は、対象の輪郭が与えられていなければ動き出せません。

同じ場所に、少なくとも三通りの名があります。解剖学では大腿と呼び、股関節から膝関節までと定義します。両端が骨格の構造で押さえられているので、境界の争いが起きません。被服の世界では「わたり」のように、測る位置そのものを名にしてしまいます。これも実務上は一意に決まります。ところが日常語の「ふともも」には、この種の端がありません。膝の近くまで含めるのか、付け根の内側を含めるのか、話者ごとに揺れたまま使われ続けています。

表記も一定していません。「太腿」「太股」、そして仮名書きの「ふともも」が並存しています。「腿」は常用漢字表に採られておらず、公用文や新聞の表記では避けられる字です。一方「股」のほうは、二〇一〇年の改定で身体部位の字がまとめて加えられたとき、表の内側に入りました。同じ領域を指す語が、字の資格の違いによって二通りに書き分けられているわけです。もっとも、拍で数えればどの表記も、ふ、と、も、も、の四拍で変わりません。表記の揺れは、音の側にはまったく及んでいません。仮名書きが選ばれやすいのも、この字の資格をめぐる問題を丸ごと回避できるからです。ふともも、と開いてしまえば、どちらの漢字を採るかという判断そのものが要らなくなります。表記の選択が内容から独立して動いていることを、この語はよく示しています。

性の科学が調査票をつくるとき、必ず起きる問題があります。人に尋ねるには項目を立てねばならず、項目を立てるには対象を分類せねばなりません。行為の分類、部位の分類、頻度の目盛り——どれも、答える側の経験を既成の枠へ流し込みます。「性感帯」という概念も、機能によって定義されており、解剖学的な境界を持ちません。どこからどこまでがそれに当たるかは、原理的に確定しないままです。分類の網は、身体の上ではなく、質問紙の上に張られています。

太腿は、その確定しなさが最も見えやすい場所です。性器でも顔でもなく、たいてい覆われていて、しかし境界のどちら側とも言い切れない。解剖学は関節を使って端を決め、被服は測定位置を使って端を決め、日常語だけは端を決めずに置いておきました。三つのうち最後の一つが、この領域を輪郭なしのまま扱い続けています。境界のはっきりした名を持つ領域と、持たない領域では、書くときの働きも変わります。大腿と書けば計測と診療の文脈が起動し、ふとももと書けば触覚と衣服の文脈が立ち上がる——同じ肉について、二つの語がまったく別の装置を呼び出します。名づけが曖昧であることは、記述が未熟であることを意味しません。分けきれないものを分けないでおくことも、一つの処理の仕方です。

文: hakadoru.ai 編集部

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