杭打ち
【くいうち】名詞句同義語
同品詞の類義語
類義句
同品詞の慣用的言い換え
直喩変換
「Xのような」「Xみたいに」形式の直喩
副詞的言い換え
情態副詞・形容詞の副詞的変換
動詞的言い換え
形容詞・副詞を動詞句に変換
体言的言い換え
用言を体言に変換
婉曲・強調変換
ニュアンスの増減(婉曲化・強調化)
同品詞の類義語
同品詞の慣用的言い換え
「Xのような」「Xみたいに」形式の直喩
情態副詞・形容詞の副詞的変換
形容詞・副詞を動詞句に変換
用言を体言に変換
ニュアンスの増減(婉曲化・強調化)
重い槌を綱で吊り、何人もで引き上げては落とす——地面を固め、杭を沈めていく作業には、息を合わせるための掛け声が欠かせませんでした。その掛け声からヨイトマケという呼び名が生まれ、作業そのものと、そこで働く人々を指す言葉になりました。一九六〇年代に発表された歌謡がこの語を広く知らせましたが、もとは現場で交わされていた音です。杭打ちという語は、はじめから単独の動作の名ではなく、複数の身体が同じ拍を共有する労働の名として使われてきました。
語の形も、そのことを裏づけています。杭打ちは、名詞の杭に動詞の連用形が付いて名詞になった作りで、草刈り、糸巻き、綱引きと同じ型です。この型は、一回で終わらない作業を名指すときに選ばれます。打つという動詞は本来ひと突きで完結できるはずなのに、連用形にして名詞化した途端、反復が前提として組み込まれます。性の体位名としてこの語が採られたときも、名づけの根拠になったのは動作の形状よりも、この反復の含みのほうだったと考えられます。
杭には、打ち込まれた場所を所有と管理の単位に変える働きがあります。土地の境を示す目印が杭であるのは、抜き差しできる棒一本が線を確定させるからです。近世の遊里が堀と塀と大門で囲われ、出入りの時刻まで定められていたのも、性を都市の一区画に固定するという同じ発想の上にありました。制度は、身体そのものを規制するより先に、まず場所を囲います。囲いを作る道具の名が、囲いの内側で用いられる語彙に流れ込んでいるのは、偶然にしてはよくできた対応です。
囲いは、一度定めれば動かないというものでもありませんでした。江戸では十七世紀の初めに一箇所の遊里が公許され、市街の拡大と大火を経て、十七世紀の半ばに浅草の外れへ移されます。堀も塀も解かれ、別の土地で引き直されました。線は、引いた者の都合で何度でも打ち直せます。それでも引かれているあいだ、その線は内側と外側を同時に作り、どちらに立つかで人の扱いを変えてしまいます。杭を打つという作業も、この性格をそのまま持っています。打ち込む一瞬は可逆に見えて、打ち終えた地面はもう元の地面ではありません。
近世に流通した性の指南の書物は、体位の数え方に相撲の四十八手という枠を借り、個々の名前の多くを職人仕事や農漁の作業から取ってきました。借用は露骨な語を避けるための迂回であると同時に、行為を技として扱う枠組みでもありました。杭打ちという名は、その両方の性格を持っています。労働の語であるために口にしやすく、労働の語であるために、上達や熟練という尺度まで一緒に持ち込んでしまいます。
機械が導入されると、掛け声は現場から消えました。動力で打ち込む装置が拍を刻むようになり、人が声で息を合わせる必要はなくなります。ところが語のほうは残りました。実体としての共同労働が失われたあとも、杭打ちという言い方だけが、反復と協働の含みを保ったまま別の領域で使われ続けています。労働語が比喩へ移るとき、多くの場合こういう順序をたどります。作業が機械に置き換わり、身振りの記憶だけが語に沈殿するのです。
打ち込まれた杭は、抜かれることを前提としません。境界標も基礎の杭も、役目を終えたあとは地中に残ります。ところが語としての杭打ちが切り取っているのは打ち込む過程だけで、残された杭のその後をまったく含みません。名づけが作業の時間だけを取り出し、結果を視野の外に置いていることが、この語のいちばんの性格です。掛け声で拍を合わせていた者たちも、固めた地面の上に何が建つかは知らされないまま、次の現場へ移っていきました。
文: hakadoru.ai 編集部
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