房事

【ぼうじ】名詞

同義語

同品詞の類義語

交わり文芸的
契り文芸的
淫らな儀式文芸的

類義句

同品詞の慣用的言い換え

淫戯文芸的
肉体の交歓文芸的

直喩変換

「Xのような」「Xみたいに」形式の直喩

情熱の嵐のような文芸的
官能の海に溺れるように文芸的

副詞的言い換え

情態副詞・形容詞の副詞的変換

激しく

動詞的言い換え

形容詞・副詞を動詞句に変換

淫らな舞いを演じる文芸的

体言的言い換え

用言を体言に変換

愛欲の儀式文芸的

婉曲・強調変換

ニュアンスの増減(婉曲化・強調化)

激しく絡み合う
肉欲に溺れる文芸的

関連語を探す

部屋の名を借りた漢語の温度

九八四年、丹波康頼が朝廷に献じた医心方は全三十巻からなり、日本に現存する最古の医書とされています。中身の大半は中国の医書からの引用で、康頼自身の議論はほとんど見当たりません。その第二十八巻が房内と題された巻で、中国本土では散逸してしまった房中の書の文言が、写された形でここに残りました。編纂の姿勢が保守的だったために、原典が失われたあとの世界で価値が生まれたわけです。しかもこの書は長く宮廷の医家に秘蔵され、広く読まれないまま伝えられました。隠されていたことが保存の条件になったという逆説が、この巻には二重にかかっています。テキストの生き残り方としては、創作より複写のほうが強かったことになります。

房という字は、もともと部屋を指します。母屋の脇にある小部屋、区切られた室、そこから転じて建物の一区画を表しました。正室に対して側室を房と呼ぶように、居住空間の名がそのまま人間関係の名にもなります。この字にはもう一系統の用法もあって、乳房、花房、一房の葡萄というように、まとまってぶら下がるものを指します。仕切られた小部屋が並ぶ形と、実が房状に連なる形が、同じ一字のなかに同居しているわけです。その字に事を足しただけの構成でできたこの語は、行為そのものを一度も名指していません。閨房で起きることを、閨房という場所の名で言い換える——転喩がそのまま語彙になった例で、隣の語に置き換えると、この迂回の構造だけが失われます。

近代の日本語で、この迂回は実用の道具になりました。同じ内容でも、和語で書けば生々しく、漢語に載せ替えると温度が下がります。表記と語種を替えるだけで露骨さの目盛りを動かせるのは、日本語の書き手が持っている特殊な自由です。検閲が厳しい時代には、この目盛りが生き延びるための技術になりました。伏字や省筆と並んで、硬い漢語で覆うという手が広く使われます。同じ場面でも語種を一段硬くするだけで当局との距離が変わるのですから、書き手は温度の目盛りを一語ずつ選び直していたことになります。

近世の読み物は、この壁をあまり必要としていません。一七六五年に初編が出た誹風柳多留のような川柳の撰集では、閨の話題も俗語と和語のまま十七音に収められ、硬い漢語で覆う操作はほとんど見られません。町人の文芸は、隠す代わりに笑いへ変換する道を選びました。覆いが要るようになるのは、隠すことが制度の側から要求されてからです。文学史のなかで漢語の壁が厚くなる時期と、出版統制が強まる時期は、おおむね重なっています。

統語のうえでも、この語は固いままです。房事するという言い方はまず使われず、房事を慎む、房事に耽るというように、必ず名詞のまま構文に置かれます。同じ漢語でも、恋愛や交際はサ変動詞になれるのに、この語はなれません。養生の言説に取り込まれたときには、すでに慎むべき対象として目的語の位置に固定されていました。動詞になれない語は、主語の座に立つことができません。名詞のまま扱われ続けたことが、この語といまの読者とのあいだの距離を保っています。

文: hakadoru.ai 編集部

エディタで直接置換して執筆を加速

SaaS エディタではシソーラスの結果をワンクリックで本文に反映できます

無料で始める →