弄る

【いじる】動詞

同義語

同品詞の類義語

愛撫する文芸的
戯れる文芸的
刺激する

類義句

同品詞の慣用的言い換え

手を這わせる
指先を踊らせる文芸的

直喩変換

「Xのような」「Xみたいに」形式の直喩

触れるだけで感じるほどに文芸的
快楽の炎を灯すように文芸的

副詞的言い換え

情態副詞・形容詞の副詞的変換

淫らに文芸的

動詞的言い換え

形容詞・副詞を動詞句に変換

挑発する

体言的言い換え

用言を体言に変換

官能の戯れ文芸的

婉曲・強調変換

ニュアンスの増減(婉曲化・強調化)

熱く触れる文芸的
官能の指先文芸的

関連語を探す

乾くまでの数十分——触れて変わる面と、決まらない読み

メソポタミアの粘土板は、乾ききるまでのわずかな時間だけ書き換えを許しました。葦を削った尖筆を押し当てれば楔形の窪みが並び、指の腹で撫でれば窪みは埋まります。焼き固めるか天日で乾かすまで、板は触れられるたびに姿を変える素材でした。書き手の指が最後にどこへ触れたかによって、四千年後に読まれる文面が決まっていたことになります。同じ地域では円筒印章も使われました。石の円筒に彫った文様を、湿った面の上で転がして連続する図像を写し取る道具です。押すのでも撫でるのでもなく、転がしながら移動させる。手の運動の長さが、そのまま図像の長さになります。

触れることを手続きとして扱う発想は、古代の儀礼に広く見られます。古代エジプトの葬送では、遺体や像の口に道具を当てる開口の儀式が行われたと伝えられ、その接触によって像が飲食し発話する能力を得るとされました。触覚は、対象の状態を切り替える装置として設計されていたわけです。手が感覚器であると同時に効力を持つ道具でもあるという二重性は、身体をめぐる古代の考え方の基層に置かれています。

アリストテレスは感覚を論じるなかで、触覚をすべての動物が備える最も基礎的なものとして位置づけました。視覚や聴覚は隔たりを越えて働きますが、触覚には隔たりがありません。触れる側は、触れると同時に触れられます——この相互性のせいで、触覚だけが、観察と干渉を分離できない感覚として残されました。見るだけで済ませることはできても、触るだけで済ませることはできません。

日本語の「弄る」は、この分離不能をそのまま抱えた表記です。この二文字を前にした読者は、まず読みを決めなければなりません。いじる、まさぐる、もてあそぶ——三つとも当てられ、しかも指す手つきの温度がそれぞれ違います。送り仮名を増やして「弄くる」と書けば、雑に手を入れる側へ傾きます。文脈が足りなければ読みは決まらず、読みが決まらなければ行為の輪郭も決まりません。表記のほうが行為より広く、書き手はその広さを狭める作業から始めることになります。

近年の用法では、目的語から物質性が抜け落ちました。設定を弄る、数値を弄る、画像を弄る——指が触れているのは硬い板の表面だけで、変化が起きるのは画面の向こう側です。触覚は入力の合図としてしか働かず、対象からの手ごたえは返ってきません。それでも書き手はこの動詞を選び続けています。粘土の時代から受け継がれた「表面を繰り返し行き来する」という運動の形だけが、手ごたえを失ったまま残ったことになります。

読みが定まらない理由も、行為そのものの輪郭が定まらないところにあるのでしょう。修理も、いたずらも、確かめるだけの動作も、手が対象の表面を往復する点では区別がつきません。区別を与えているのは動作の形ではなく、触れられる側がそれをどう受け取ったかのほうです。粘土板に戻れば、指で撫でた面には撫でた側の指紋が残ります。何かに触れて変えるとき、変わっているのは対象の側だけではありません。

文: hakadoru.ai 編集部

エディタで直接置換して執筆を加速

SaaS エディタではシソーラスの結果をワンクリックで本文に反映できます

無料で始める →