屹立
【きつりつ】名詞同義語
同品詞の類義語
類義句
同品詞の慣用的言い換え
直喩変換
「Xのような」「Xみたいに」形式の直喩
副詞的言い換え
情態副詞・形容詞の副詞的変換
動詞的言い換え
形容詞・副詞を動詞句に変換
体言的言い換え
用言を体言に変換
婉曲・強調変換
ニュアンスの増減(婉曲化・強調化)
同品詞の類義語
同品詞の慣用的言い換え
「Xのような」「Xみたいに」形式の直喩
情態副詞・形容詞の副詞的変換
形容詞・副詞を動詞句に変換
用言を体言に変換
ニュアンスの増減(婉曲化・強調化)
前半の一字が日本語で顔を出す語は、驚くほど少ない。この二字と、屹然と、そして当て字の屹度——数えられるほどしかなく、常用漢字表にも入っていません。屹度がきっとの当て字として通用したという事実は、この字が早い段階から、意味からいくらか離れたところで使われることに慣れていたのを示しています。音のためだけに字が差し出されたわけです。そういう扱いを受けた字は、後の時代になっても転用されやすくなります。
辞書の語釈に従えば、屹立するのは山であり、岩であり、塔や煙突です。共通しているのは、動かないこと、周囲より高いこと、そして人が作ったか自然が作ったかを問わず生きていないことでした。人を主語に置く用法もありますが、その場合も比喩として、動じない姿勢のほうを指しています。性表現の場でこの語が現れるとき、破られているのはまさにこの共起の制限です。生きて動く組織を、動かないものの語彙で書くことになります。読者はその齟齬を、内容そのものより先に受け取ります。
和語との差も見ておく必要があります。日本語には立つという基本動詞があり、そそり立つ、そびえるといった複合形も揃っていますから、意味を運ぶだけなら漢語は要りません。それでも二字の漢語が選ばれるのは、和語のほうが生活の全域を覆っていて焦点が定まらないからです。使用場面の狭い語ほど、語域の合図としてはよく働きます。読者は意味を受け取るより先に、文章の格が一段上がったことを受け取ります。この効果は語義とは無関係で、語彙の分布だけから生まれています。
語が移動した背景には、それを促した制度の側の歴史があります。明治の出版法は、風俗を害すると判断された出版物の発売と頒布を禁じる権限を行政の側に与えました。処分が下るのは刊行のあとですから、書き手と版元は、どこまでなら通るかを事前に見積もりながら原稿を整えることになります。基準は条文に書かれておらず、過去の処分の集積から推し量るほかありません。ここで起きていたのは語の消滅ではありません。禁じられた位置に、別の語域から借りてきた語が入りました。
借りてきた語は、借りた先の性質をそのまま持ち込みます。地質と建築の語彙が身体へ流れ込んだ結果、硬さ、垂直、不動という三つの含意が同時に運ばれました。ところがこの三つのうち、不動だけは事実と食い違います。描写しようとしている対象は静止していないからです。静止の語で運動を書く——この矛盾が、この語につきまとう妙な荘重さの正体でしょう。荘重さは狙って作られたものではなく、迂回の副産物として生まれました。
行政処分の仕組みが姿を消したあとも、迂回の癖は語彙の側に残りました。規制がゆるんだ環境で直截な語を選べるようになってもなお、こうした転用語は使われ続けています。読者の側が、語域の切り替えを合図として読む訓練を積んでしまったからです。制度が作ったのは禁止の一覧ではなく、読み方のほうでした。もともと音のために貸し出されていた字だと思えば、この一字は二度にわたって、本来の役目から離れたところで働いたことになります。
文: hakadoru.ai 編集部
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