官能
【かんのう】名詞同義語
同品詞の類義語
類義句
同品詞の慣用的言い換え
直喩変換
「Xのような」「Xみたいに」形式の直喩
副詞的言い換え
情態副詞・形容詞の副詞的変換
動詞的言い換え
形容詞・副詞を動詞句に変換
体言的言い換え
用言を体言に変換
婉曲・強調変換
ニュアンスの増減(婉曲化・強調化)
同品詞の類義語
同品詞の慣用的言い換え
「Xのような」「Xみたいに」形式の直喩
情態副詞・形容詞の副詞的変換
形容詞・副詞を動詞句に変換
用言を体言に変換
ニュアンスの増減(婉曲化・強調化)
食品や日用品の開発現場では、いまも官能検査という手続きが使われています。訓練を受けた検査員が、味や香りや手触りや音を決められた尺度で言葉にし、機器の測定値と並べて記録する方法です。工業規格として整備されており、そこでの官能という語に色めいた含みはまったくありません。この用法のほうが、実は語の元の姿に近いところにあります。
官の字は役所や役人の意味が主ですが、器官という熟語が示すとおり、身体の部分を指す系統も古くから走っています。古い漢籍には五官という言い方があり、感覚を担う器官をひとまとめに呼びました。能のほうは、はたらき、あるいは能力です。官能とは器官のはたらきです——か・ん・の・うの四拍は本来、感覚器が仕事をしている状態そのものを名指していました。近代日本語がこの語に色情の含みを重ねたのは後の段階で、原義は検査の現場に取り残される形で生き延びています。
明治から大正にかけての文章では、官能はまだ知覚一般を指す語として使われていました。官能が鋭い、官能を働かせるといった言い方に、色めいた含みが必ず伴うわけではありません。特定の含みが固定していったのは、この語を題に冠した小説の一群が読者層を作ってからのことだと考えられます。語の意味は、辞書の記述よりも、その語が実際に置かれた文脈の集積で決まります。
発達の側から見ると、器官のはたらきは最初から完成しているわけではありません。新生児にとって最も分化した探索器官は口で、手が思うように動くようになる前から、届いたものはまず口へ運ばれます。器官がはたらき始める順序も一様ではありません。触覚は胎生のかなり早い時期から機能し、口のまわりから始まって身体の末端へ広がっていくと考えられています。視覚は最も遅れる系で、新生児がはっきり像を結べる距離は限られ、細かい形の見分けは月単位で育っていきます。身体は一様な感覚の膜として与えられるのではありません——入口ごとに開通の時期の違う、時間差のある地図として与えられます。
感覚どうしの結びつきも、思いのほか早くから働いています。突起のあるおしゃぶりと滑らかなおしゃぶりを、目に触れさせないまま乳児にしゃぶらせ、そのあと二つを並べて見せると、しゃぶったほうを長く見つめるという報告があります。口で得た形の情報が、視覚の側へ渡っているわけです。入口の違いを越えて同じ対象を組み立てる働きが、はじめのほうから走っています。
自分と他人の境目も、時間をかけて引かれます。自分で自分をくすぐってもくすぐったくならないという現象は、運動の指令が同時に感覚の見込みを作り、見込みどおりに届いた触覚が弱められるためだと説明されています。同じ強さの刺激でも、誰が起こしたかによって届き方が変わるわけです。鏡に映るものが自分だと分かる時期については、額に印をつけて鏡を見せ、鏡ではなく自分の額へ手をやるかどうかで調べる方法があり、おおむね一歳半から二歳のあいだに現れると報告されています。思春期には身体そのものが作り替えられ、いったん定まった身体像が組み直されます。
官能検査の検査員が訓練を必要とすることは、この経過と地続きです。感覚は完成品として配られるのではなく、器官の使い方として少しずつ習得されます。同じ香りを嗅いでも、差を言い分ける語彙を持たない者にはその差が届きません。官能という語が能の字を含んでいることは、その事情に忠実です。受け身の受容ではなく、身につけた能力として感覚を捉える視点が、この二字にはもともと畳み込まれていました。
文: hakadoru.ai 編集部
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