艶めかしい

【なまめかしい】形容詞

同義語

同品詞の類義語

妖艶な文芸的
官能的な文芸的
色っぽいcolloquial

類義句

同品詞の慣用的言い換え

エロティックな
挑発的な

直喩変換

「Xのような」「Xみたいに」形式の直喩

絹のような文芸的
蜜のよう文芸的
情熱の炎に包まれる文芸的

副詞的言い換え

情態副詞・形容詞の副詞的変換

しっとりと
淫らにcolloquial

動詞的言い換え

形容詞・副詞を動詞句に変換

蕩ける文芸的
蠱惑する文芸的

体言的言い換え

用言を体言に変換

官能の極み文芸的
誘惑の化身文芸的

婉曲・強調変換

ニュアンスの増減(婉曲化・強調化)

淫美な文芸的
色香を放つ文芸的

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「めく」が抱え込んでいる時間

暗くした室内で、関節にだけ小さな光点を取り付けた人物を撮影します。静止しているあいだ、映像はただの点の散らばりにしか見えず、観察者はそこから何も読み取れません。ところが人物が歩き出した瞬間、見る側は迷わずそこに人体を認めます。一九七〇年代にスウェーデンの心理学者ヨハンソンが報告したこの現象はバイオロジカル・モーションと呼ばれ、その後の視覚研究で繰り返し確かめられてきました。人体という解を指し示しているのは、点の配置ではありません。先に動く部位と遅れて動く部位の速度差、つまり時間のなかにしか存在しない関係が、形の情報をまるごと肩代わりしています。動きを止めれば、解も一緒に消えます。

この形容詞の組み立ては、そこで起きていることとよく似ています。もとにあるのは「艶めく」という動詞で、末尾の「めく」は接尾語です。春めく、色めく、ざわめく、時めく——「めく」がつくと、語はその状態そのものではなく、その状態へ傾きはじめた気配を指すようになります。春めくはまだ春ではありませんし、色めくは色そのものではありません。完成した性質に名を与えるのではなく、変化の途上を名指す装置として、この語尾は働いています。静止した一枚の絵に当てるとどこか据わりが悪くなるのは、語のほうが時間の幅を要求しているからでしょう。

古語の「なまめかし」は、平安期には色情に限られない語でした。若々しく上品であること、みずみずしくあることを指し、男の装いや所作にも用いられています。語基の「なま」は「生」で、未熟や不十分を含意する系列に属します——生煮え、生半可、生乾き。成り立ちの上では、足りていない状態を褒める語なのです。熟しきったものや仕上がったものを称える語であれば、こういう部品では作られなかったはずです。

認知科学の側からは、この「足りなさ」に別の説明がつきます。見え方が二つのあいだで行き来する図——手前と奥が入れ替わる立方体の線画や、向きの定まらない輪郭図では、どちらか一方に定まった瞬間に、もう一方の見え方は消えます。定まらないでいるあいだだけ、二つの解釈が同時に維持されているわけです。注意という限られた資源は、すでに解けてしまった問題には多く配分されません。この語尾が確保しているのは、埋まらないまま残る余地だと言えます。感覚の統合にも、わずかとはいえ時間がかかります。断片的な手がかりが一つの像へまとまるまでの短い区間は、まだどの解にも落ちていない時間です。この語が名指しているのは、おそらくその段階です。像が確定してしまえば、名指す必要のほうがなくなります。

発音に要する時間も、語の性質と無縁ではありません。な・ま・め・か・し・い と数えて六拍あります。近い意味で使われる「色っぽい」は い・ろ・っ・ぽ・い の五拍、「艶やか」は あ・で・や・か の四拍です。六拍の語は、口のなかで立ち上がりきるまでに他の二語より長くかかります。意味の上で遅れを抱えている語が、発音の上でも最も遅い——偶然かもしれませんが、書き手にとっては使える偶然です。急いで進む場面にこの語を置くと、文の速度だけが先へ行き、描かれた身体が置き去りになります。

文: hakadoru.ai 編集部

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