放つ

【はなつ】動詞

同義語

同品詞の類義語

射精する文芸的
精を放つ文芸的
ほとばしる文芸的

類義句

同品詞の慣用的言い換え

欲望を解き放つ文芸的
絶頂を迎える文芸的

直喩変換

「Xのような」「Xみたいに」形式の直喩

噴水のように
奔流となって文芸的

副詞的言い換え

情態副詞・形容詞の副詞的変換

激しく
一気に

動詞的言い換え

形容詞・副詞を動詞句に変換

ほとばしり出る文芸的
解放する

体言的言い換え

用言を体言に変換

欲望の解放文芸的
絶頂の瞬間文芸的

婉曲・強調変換

ニュアンスの増減(婉曲化・強調化)

ほとばしるように文芸的
一気に解き放ち
荒々しく

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捨て続けているから保たれる——体温と、外へ出す動詞

水が一グラム体表で蒸発するとき、およそ二・四キロジュールの熱が奪われます。汗腺はこの物理量を利用する装置で、体温が上がると皮膚の血管が拡張し、血流が体表へ回り、汗が出て、蒸発とともに熱が去っていきます。運動時の産熱量は安静時の何倍にもなりますが、深部体温はおおむね三十七度前後の狭い幅に収まり続けます。収まっているのは、恒常性が静かに保たれているからではありません。絶えず外へ捨てているからです。

「放つ」という動詞が引き受けているのは、この「外へ捨てる」という一群の事態です。取れる目的語を並べてみると、幅の異様さがわかります。矢を放つ、光を放つ、香を放つ、犬を放つ、言い放つ。物体もエネルギーも分子も生き物も言葉も、同じ一語で外へ出されます。共通しているのは、出たものが戻らず、空間へ広がっていくことです。「出す」なら容器の内と外の関係で話が終わりますが、この語は出たあとの拡散まで含意に抱えています。

「放す」との関係も見ておく価値があります。は・な・つ の三拍と、は・な・す の三拍は、語源的に同じ系列に属すると考えられています。それでも用法は分かれました。「放す」は握っていた手をひらく側にあり、「放つ」は勢いをつけて送り出す側にあります。前者は拘束の解除で、後者は運動の開始です。手を離すだけでよいのか、初速を与えなければならないのか。この差は、生理の記述にそのまま効いてきます。

呼吸のほうにも似た勘定があります。安静時の成人は一分間におよそ十数回息を吐き、そのたびに体内で温められ、水蒸気でほぼ飽和した空気を外へ出しています。呼気から失われる熱と水分は汗ほど目立ちませんが、一日を通せば無視できない量になります。それでも息を吐く動作を、日本語はふつう「放つ」とは言いません。呼吸が往復する運動だからだと考えられます。この動詞は、戻ってこないものにしか使えません。矢も、光も、匂いも、いったん出たあとは送り手の管理を離れていきます。

匂いについては、この語のふるまいがとくに正確です。腋窩などに分布するアポクリン腺の分泌物は、出たばかりの時点ではほとんど無臭だと言われます。皮膚の常在菌がそれを分解する過程で、はじめて匂いとして感じられる分子が生じます。つまり体は匂いそのものを出しているのではなく、匂いになる材料を出しています。それでも日本語は「体臭を放つ」と言います。放たれた瞬間には存在しなかったものが、空間で組み立てられてから他人に届く——その時間差を、この動詞は隠したまま運んでいます。

もうひとつ、この語は意志のある主語とない主語の両方を取ります。射手は矢を放ちますが、皮膚は熱を放ちます。前者は行為で、後者は現象です——同じ動詞が、決断と反射をひとつの形にまとめてしまっています。自律神経が支配する発汗や血管拡張は、当人が決めて起こすものではありません。それでも文にすれば、体は主語の位置に立ち、あたかも何かを差し出しているように書かれます。書き手がこの語を選ぶとき、意図と生理のどちらを前に出すかは、まだ決まっていません。決めずに置けるという点が、描写の道具としてのこの語の値打ちです。

文: hakadoru.ai 編集部

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