這わせる
【はわせる】動詞同義語
同品詞の類義語
類義句
同品詞の慣用的言い換え
直喩変換
「Xのような」「Xみたいに」形式の直喩
副詞的言い換え
情態副詞・形容詞の副詞的変換
動詞的言い換え
形容詞・副詞を動詞句に変換
体言的言い換え
用言を体言に変換
婉曲・強調変換
ニュアンスの増減(婉曲化・強調化)
同品詞の類義語
同品詞の慣用的言い換え
「Xのような」「Xみたいに」形式の直喩
情態副詞・形容詞の副詞的変換
形容詞・副詞を動詞句に変換
用言を体言に変換
ニュアンスの増減(婉曲化・強調化)
園芸には「誘引」という作業があります。蔓性の植物を支柱や壁に沿わせ、伸びていく方向を決めてやる仕事です。縛りつけて引きずるのではありません。蔓は自分で巻きつき、自分で登っていきます。人にできるのは、登れる場所を用意して待つことだけです。葡萄棚も、藤棚も、朝顔の行灯仕立ても、この待つ時間の上に成り立っています。
日本語の使役には、強制の読みと許容・放任の読みがあります。「這わせる」は、ほぼ後者へ振り切れた語です。這うのはあくまで這う側であって、這わせる側は経路を用意しているにすぎません。命じても、押しても、這う速度は上がらないのです。この語には、相手の運動が終わるのを待つ時間があらかじめ折り込まれています。使役形でありながら支配の匂いが薄いのは、そのためでしょう。
古代の想像力は、地に接して進むものへ特別な位置を与えてきました。ギルガメシュ叙事詩では、主人公が海の底から手に入れた若返りの草を蛇に奪われ、蛇は皮を脱いで去っていきます。人が失った再生を、地を這うものが引き受けた話です。エジプトの王の額飾りには蛇が据えられ、ギリシアの医神アスクレピオスの杖には蛇が巻きついていました。地面との接触面がもっとも大きい生き物が、生と死の境を越える力の象徴として繰り返し選ばれてきたことになります。
植物のほうも、古代の壁面をずいぶん長く這ってきました。地中海から西アジアにかけて生まれた蔓草の意匠は、様式化されながら東へ運ばれ、日本には唐草文として定着します。実物の蔓が一本の線として壁を移動していく様子を、文様は静止した線に置き換えたわけです。器や布の上で、始まりも終わりも見えないまま連続する曲線が、途切れずに面を覆っていく。這わせるという語が、指や視線のような本来這わないものにも使われるのは、この「連続した線が面を移動する」という像が、装飾を通じて何千年も反復されてきたからかもしれません。
這う運動の特徴は、接触が点ではなく線であることです。歩行では足の裏が交互に地を離れ、接地は点の連続になります。這う身体は離れません。全長にわたって触れ続けたまま位置を変えます。触れて離す動作ではなく、触れたまま移動する動作であるために、この語には輪郭を写し取る力があります。触れられた側は、自分の形を外側から教えられることになります。点で触れる動詞なら接触の回数を数えられますが、線で触れる動詞に回数はありません——数えられるのは長さと、そこに費やされた時間だけです。
這うの主語になれるものは、実はかなり限られています。蛇、蔦、幼児、霧、噂——いずれも自分の意志を強く主張しないか、主張しても速度の遅いものたちです。この語を選んだ文は、それだけで速度についての宣言になります。急ぐ場面には使えず、使えば文の呼吸が崩れてしまいます。古代の庭で葡萄の蔓を棚へ導いた人も、実がなるまでの季節を数えていたはずです。誘引の作業には、その季節のあいだ何度も手を入れ直す反復も含まれていました。一度決めた経路が守られる保証はなく、伸びた先で向きを変えてしまう蔓もあります。結果を先取りしない者の手つきが、この使役形にはまだ残っています。
文: hakadoru.ai 編集部
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