あられもない

【あられもない】形容詞

同義語

同品詞の類義語

淫らな文芸的
恥ずかしい

類義句

同品詞の慣用的言い換え

いやらしいほどにcolloquial
乱れ咲く文芸的

直喩変換

「Xのような」「Xみたいに」形式の直喩

蜜月の文芸的
花開く文芸的

副詞的言い換え

情態副詞・形容詞の副詞的変換

官能的に

動詞的言い換え

形容詞・副詞を動詞句に変換

乱れる

体言的言い換え

用言を体言に変換

淫靡な瞬間文芸的

婉曲・強調変換

ニュアンスの増減(婉曲化・強調化)

熱を帯びて

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止められない側の身体——肯定形を持たない語について

立毛筋という小さな筋肉が、体毛の一本ごとに斜めについています。交感神経の指令で縮み、毛を立て、皮膚に細かな粒を作ります。厚い毛皮を持つ動物では空気の層を厚くして保温に働きますが、体毛の薄い人間では温度を保つ効果はほとんど残っていません。それでも寒さや強い情動のたびに、この筋は正確に縮みます。同じ神経系が支配するものとして、手のひらと足の裏と腋に集中する発汗があります。温度と無関係に情動で立ち上がるため、暑いときの汗とは分布も反応の速さも違うと説明されます。嘘発見器の名で知られる装置が指先の電気の通りやすさを測るのは、この汗の性質を当てにしているからです。

これらに共通するのは、意志で始めることも止めることもできないという一点です。腕は上げようと思えば上がりますが、瞳孔を開こうと思って開く人はいません。頬に血が集まる反応にいたっては、止めようとする努力そのものが強めることさえあります。十九世紀の博物学者は、顔の紅潮を人にもっとも特有な、もっとも奇妙な表出として記述しました。恥じているという事実を、恥じている本人の意に反して外へ知らせてしまう仕組みが、なぜ残ったのか——その問いは今も完全には閉じていません。しかも、こうした反応は互いに足並みを揃えません。強い緊張のもとでは末梢の血管が縮んで指先の温度が下がりますが、恥じらいの場面では顔の血流が増えます。同じ系のもとで、部位ごとに逆向きの徴候が同時に立つことがあるわけです。外から見える印は、いつでも一つの物語へまとまるとはかぎりません。

日本語がこの領域を名指すとき、ひとつ変わった形を選びました。あられもない、という語には肯定形がありません。あられもある姿、とは誰も言いません。あ・ら・れ・も・な・い の六拍のうち、末尾の二拍が打消しにあたります。しかも、その打消しを外した形は語として立ちません。もとは「有る」に助動詞が付いた形で、あるはずのない、ふさわしくない、という評価だったと説明されます。とんでもない、そっけない、といった語と同じく、否定の側にだけ現実の使用が残った類です。

肯定形が育たなかったことには、理由があるように思います。この語が実際に掛かるのは、姿・格好・声といった、本人の管理の外にはみ出したものばかりです。管理できている状態には、わざわざ名前が要りません。裾が乱れていない、声が上ずっていない——それは記述されるべき出来事ではなく、ただの背景です。名づけが必要になるのは規範から外れたときだけで、だから語は片側にしか伸びなかったのでしょう。評価の語でありながら、評価の基準そのものは語の中に書かれていないという点も、この一族に共通しています。

書く実務に落とすと、この語を使う場面では、描かれるものを随意筋の外側から選ぶのが効きます。姿勢や衣服の乱れは、その気になれば直せます。直せないもの——粒立った腕、こめかみの拍動、指先だけに滲む汗、飲み込むたびに変わる声の張り——を一つ置いたほうが、規範との距離は正確に出ます。あられもなさとは、はみ出した量のことではなく、本人の指令が届かない範囲がどこまで広がったかということなのだと思います。

文: hakadoru.ai 編集部

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