苛む

【さいなむ】動詞

同義語

同品詞の類義語

責め立てる文芸的
責める
攻め立てる

類義句

同品詞の慣用的言い換え

愛撫の嵐文芸的
欲望のままに弄ぶ文芸的

直喩変換

「Xのような」「Xみたいに」形式の直喩

嵐のような文芸的
激しく荒々しい

副詞的言い換え

情態副詞・形容詞の副詞的変換

激しく

動詞的言い換え

形容詞・副詞を動詞句に変換

愛撫を繰り出す
貪るように触れる文芸的

体言的言い換え

用言を体言に変換

激しさ
官能の嵐文芸的

婉曲・強調変換

ニュアンスの増減(婉曲化・強調化)

激しくも甘美な文芸的
荒々しくも官能的な文芸的

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主語の座に何が入るか

一二一五年の第四ラテラノ公会議は、成人に達した信徒に、少なくとも年に一度は自分の罪を司祭へ告白することを義務づけました。それまで散発的だった告解が、暦の上の義務になったわけです。何をしたかを言葉にして差し出す手続きが制度になると、告白すべき事柄をあらかじめ自分で点検する習慣が生まれます。制度は行為を裁くだけではありません。内面を点検するための形式そのものを、広く配布したのです。

「苛む」という動詞が現代語で現れる典型の形は、受身です。罪悪感に、後悔に、良心の呵責に——ニ格に立つのはたいてい抽象名詞で、しかも自分の内側にあるものばかりです。ところが古語の「さいなむ」は違っていました。人が人を責める、叱る、いじめるという意味で使われ、責める側には生身の人間が立っていたのです。主語の座に座るものが人から内面へ移った——この変化を、語は自分の語史として抱えています。

性をめぐる制度の歴史は、その移動と並行して進みました。日本では一八七二年の芸娼妓解放令、一九〇〇年の娼妓取締規則、そして一九五六年の売春防止法と、法の枠組みは大きく組み替えられてきましたし、十九世紀のヨーロッパでは登録と検診による管理が広く行われました。制度が変わるたびに、何が逸脱とされるかも変わります。それでも変わらないものがあります。逸脱とされた側に、自分で自分を点検させる仕組みのほうです。外側の規則が精密になるほど、内側で働く主語も精密になっていきます。

禁忌の中身は、地域と時代でよく入れ替わります。同じ行為が、ある社会では罰せられ、隣の社会では儀礼の一部として位置づけられる例は珍しくありません。それでも「苛まれる」という文の形は、中身が入れ替わっても残り続けます。何にそう感じるかは文化が決めますが、この構文そのものは、規範を内側に持ってしまった人間の側の設備です。外の規則が撤廃されたあとに、構文だけが取り残されることもあります。

字のほうを見ると、話は逆向きに進みます。「苛政は虎よりも猛し」という言葉が『礼記』に伝わっています。虎に家族を食われてなお山を降りない女に理由を尋ねると、ここには苛酷な政治がないから、と答えたという逸話です。ここでの字は、統治の側の峻厳さを指しています。人を責め立てるものは外にあり、しかもそれが政治の形をしているという理解です。字が長く担ってきたのは、内面の疼きではなく制度の圧のほうでした。同じ字が現代語で内側の感情に結びついているのは、責める役目が引き受け手を替えたのだと見ることもできます。

表記についても一つ触れておきます。「苛」の字は、二〇一〇年の常用漢字表の改定で新たに加えられた百九十六字のうちの一つです。それ以前は表外字でしたが、苛酷や苛烈といった熟語自体は広く使われてきました。字が公式の表に加わることと、その字が担ってきた経験が新しくなることとは、まったく別の話です。この動詞が扱う事態は、年に一度の告解が定められたころから、形を変えずに続いています。責める者は、いつのまにか外にいなくなっています。それが、規範の最もよく働いている状態です。

文: hakadoru.ai 編集部

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