跨る

【またがる】動詞

同義語

同品詞の類義語

またぐcolloquial
股がる文芸的
乗りかかる

類義句

同品詞の慣用的言い換え

跨がり掛ける
またがり始めるcolloquial

直喩変換

「Xのような」「Xみたいに」形式の直喩

馬に乗るように文芸的
雄馬を乗りこなすように文芸的

副詞的言い換え

情態副詞・形容詞の副詞的変換

馬乗りでcolloquial

動詞的言い換え

形容詞・副詞を動詞句に変換

乗り込む
乗り上げる

体言的言い換え

用言を体言に変換

騎乗の態勢文芸的
乗馬姿勢

婉曲・強調変換

ニュアンスの増減(婉曲化・強調化)

跨がり攻めcolloquial
跨がり倒すcolloquial

関連語を探す

降りないという姿勢

助詞ひとつで、同じ字を持つ二つの語ははっきり分かれます。川を跨ぐ橋とは言えますが、川に跨ぐ橋とは言えません。逆に、馬に跨るとは言えても、馬を跨るは落ち着きが悪くなります。ヲ格をとる他動詞と、ニ格をとる自動詞——この対立が、当の語のふるまいをほとんど決めています。格の選択は語感の問題ではなく、何が起きているかの記述そのものです。

自動詞のほうは、他動詞から派生したものだと考えられています。つなぐとつながる、ふさぐとふさがる、そして同じ関係がこの語の対にも成り立ちます。ガ行五段の他動詞に自動詞化の要素が入るこの型は日本語に広く見られ、共通しているのは、動作の結果できあがった状態が続くことを表す点です。他動詞の側が一回の越え方を指すのに対して、自動詞の側は越えた姿勢がそのまま持続することを指します。両側に体重がかかったまま、どちらにも降りていない状態が、この語の意味の中心にあります。

持続を表すからこそ、この語は物理的な鞍を離れて範囲の語彙へ育ちました。二つの世紀に跨る出来事、複数の県にまたがる山地——どれも、片方に属し切らないまま両方に触れている状態を指しています。所属の宙吊りを一語で言えるという性質は、分類を前提に動く制度にとっては扱いにくいものでもあります。分けたい側は、いつも降りることを要求します。

文法の細部にもう一度戻ると、この自動詞は「〜にまたがって」という連用の形に立ちやすく、主語が人でなくてもかまわないという性質を持っています。制度が二つの省庁に跨り、地層が三つの時代にまたがっている、といった言い方が成立します。動作主が消えても文が成り立つのは、この語が指しているのが行為ではなく配置だからです。行為であれば誰かが引き受けなければなりませんが、配置は誰のものでもないまま存続します。

性愛を主題とする文学は、まさにこの宙吊りの位置に長く置かれてきました。近世の出版において、好色を主題にした読み物は市場の主要な商品の一つでした。近代に入ると事情が変わり、文学であることと風俗を害することのあいだで、同じ一冊が二つの領域にまたがって裁かれるようになります。永井荷風の『ふらんす物語』が一九〇九年に発売禁止となったのは、その初期の例にあたります。削除を受け入れながら本文の輪郭だけは残すという対処法が編み出されたのも、両側に足をかけたままでいるための工夫です。

戦後の代表的な事例が、伊藤整の翻訳した『チャタレイ夫人の恋人』をめぐる裁判で、一九五七年に最高裁が有罪の判断を確定させています。争われたのは作品が芸術かどうかではなく、芸術であることが猥褻であることを打ち消すかどうかでした。裁判という手続きは、またがった状態のままでいることを認めず、どちらか一方へ降ろそうとします。文学の側がそれに抗する形式として選んできたのは、余白と省略、そして読者に姿勢を委ねる書き方でした。省略が働くのは、読者が空白を自分の側で埋めるからで、埋め方は一つに決まりません。裁く手続きが求めるのは単一の読みですが、書かれたものは複数の読みを許したまま残ります。降りないこと自体が技法になったと言えます。

文: hakadoru.ai 編集部

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